シンポジウム『共生社会の実現に向けた地域の取り組み』を開催しました

令和6年5月11日(土)、大分県社会福祉介護研修センター大ホールにて、「共生社会の実現に向けた地域の取り組み」をテーマにシンポジウムを開催しました。
参加者は、当会の会員、認知症に関心のある一般市民、医師や専門職、県や市・町の認知症施策に関わる方などですが、予定していた人数を大幅に超え、約70名の方に来場していただきました。

「認知症基本法で明記されている、認知症の人の尊厳を保持するとは、また希望を持って暮らすとはどういうことかを念頭に置きつつ、今日のシンポジウムをお聞きください」という、座長の古賀周一郎副代表の言葉でシンポジウムが始まりました。

認知症の人もその家族も、希望を持って暮らすことができるよう、互いに尊重しあえる地域づくりをめざす共生社会の実現に向けた取り組みについて、3事業所の方々から発表をしていただきました。

◇演題1 本人の希望実現に必要なもの、それは 『地域の力!』 

臼杵市医師会地域包括支援センターコスモス
認知症地域支援推進員 小野 未架 氏

「誰でもやりたいことをすれば元気になる。そして困った時は一人で抱え込まず、いろいろな人に相談する。解決策は地域や地域の人が持っています」と、小野さん。

◇演題2 若年性認知症の方の支援 ~本人・家族の思いに寄り添う~

中津市地域包括支援センター村上 中津市認知症初期集中支援チーム
末吉 真由美 氏  栗田 慎一 氏

「これからも状況に応じて、認知症の方が自分らしく生活できるように支援していきたいと思っています」と、末吉さん。
「認知症の方とご家族の気持ちを一番に、何かあっても連携機関と協力して支えていきます」と、栗田さん。

◇演題3 誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指して!~宇佐市の地域づくり~

宇佐市社会福祉協議会
認知症地域支援推進員 大久保 みゆき 氏

「私の役割は地域支援づくり。地域支援づくりは場づくり、町づくり、人づくり。目標は、
みんなの笑顔が見たい!みんなで笑顔になりたい!」と、大久保さん。

シンポジストの発表後、座長の古賀さんを中心に、意見交換が行われました。

古賀さんからは、「本人の気持ちを聞く際に大切にしていることは?」「ご家族との関りは?」等の具体的な問いが投げかけられ、それぞれ「まず『気持ちを教えてほしい』と伝え、その時々に返ってきた言葉の記録を取っています。記録を取っていくと、気持ちの変化がわかります」や「本人のやりたいことと家族の意向に差がある場合は、どこかで落としどころを見つけ、代替案を出します」と、やはり具体的な答えが返されていました。

参加者からも、家族として経験した葛藤や喜びが語られ、また、気持ちの揺れ動きが鮮明に記されたご本人のメモ書きが紹介されるなど、胸に迫る言葉が続きました。
2040年には高齢者のおよそ15%、6.7人に1人が認知症になると言われています。そんな時代を迎えるにあたり、この日のシンポジストの方々のお話は大変心強く、また人を思う心と行動力に感銘を受けました。そして私たち一人一人も、これからの「共生社会」を作っていく一員だということを心に留め、諦めずに誰もが安心して暮らせる社会を希求し続けることが大切だと、教えてくれたシンポジウムでした。
文:河上しげみ